デザイン書道(商業書道や筆文字と呼ばれています)は、
一般的な書道のように個人の自己表出が動機ではなく、
毛筆と墨で書く書道にデザインの要素が兼ね備わった
商業用の書のことです。
イメージを受け手の頭の中に呼び起こす仕組みが
備わった文字にするため、真っ先に考えることは、
誰にとってもわかりやすい表現になっているかどうかです。
そして必ず行うことは、お客様の気持ちに寄りそうこと。
思いやりみたいなものかもしれませんが、
伝えたいイメージに沿って、どう伝えられるようにするか、
どう読みやすくするかを考えながら、お客様の意図に推理を働かせます。
このことを繰り返し考えたあとで、はじめて筆を持ち、
お客様の機微に添った文字の輪郭を、
自分の立ち位置に戻って書いていきます。
どんな過程を経て文字が立ち上がっていくかということが明快にわかることで
感動が起こってくるものがデザイン書道です。
意表をつく造形で人々の眼を奪うのではなく、
五感にしみ込むように浸透していく書であることを意識しながら、
デザイン書道を通して“人が生きて暮らす”その切実な場面を、
お客様と一緒に創りあげていきたいです。
それまで私が眼にしていた書は、飾るためであったり、
きれいに書くための技術を学ぶための書でしたが、
身のまわりにある身近な物品に、
デザイン書道が使われていたことで、
商品そのものが魅力的であるように感じたことがありました。
ほとんど無意識に眺めていましたが、
デザインの持つ社会性と、書道の持つ伝統文化が融合したところで、
見なれた生活用品がこんな形になるのかという驚きがありました。
書く行為が問われる現代において、
視覚情報を超えて人の心に響かせることができる、
ものの見方や感じ方のひとつとして、
書の要素を機能させることができるのではないかと感じたのです。
人類も文化も育ち変化していきますが、私たちはよりよく変わりたいものです。
一方で、デザインの目的は、それを触媒にして人々が自然に心地よくあったり、
元気であったり人々の心を和ませる工夫をこらすことです。
私は古いものの中から今日に重要な価値観を見つけ、
未来を語るメッセージとして、新しい生活の価値観を見つける
お手伝いをしたいと思っています。
制作するときは、少なくて200枚ぐらい、
だいたい500枚ぐらいほど書いて、
徐々にイメージを盛りつけながら仕上げていきます。
反対にあえて、10枚しか紙を用意しないこともあります。
最小限の紙数で、失敗も許されない極度な緊張感の中から、
確かな感覚を掴んでいくことで、思わぬ文字が生まれることがあります。
道具は書く文字のイメージにあわせて選びます。
たとえば墨ですが、にじみの有無を意識的に考えた上で、
墨を独自につくるところからはじめていきます。
にじむことをあえて除いた方がよい場合も考慮しながら、
にじみが必要であれば、どこまで表現として取り入れるかということを、
計算しながらつくります。
一回一回墨の表現は変わっていくので、
はじめに意識していた表現にならず、失敗することもありますが、
その場合はまた配分を考えてつくりなおしていきます。
筆も面白い表現が生まれる自然の草木を使ったものから様々ですね。